病室102 episode.04
episode.04
嫌いだ
1通りの検査を終えた。といっても心電図とレントゲンくらいだったが。
「では、病室まで案内します」
母さんと、僕と、僕が押している車椅子に乗る、僕のじいちゃん。3人でお姉さんに付いていく。
途中、叫んでいるおじいさんや、おばあさんがいて、少し不安になったが、じいちゃんは堂々と車椅子に乗っている。それを見て、安心する。
すると急に、
「ああ!久しぶりー!」
病院ということを弁えろ母。
「おお、久しぶり、」
そう答えた中肉中背のおっさんは、どうやら母さんの知り合いらしい。
特別会話はしていなかったが、おっさんが聞いたわけでもないのに、母さんはジェスチャーと口パクでこう伝える。
これがねー、こし病ましたっていって、もー、疲れるわ。これから入院よ!
と。まるで虫を忌み嫌うかのように。
僕は、母さんのこういうところが嫌いだ。どうしても。じいちゃんが手がかかるのは分かるし、面倒臭いのも、だるいのも、わかる。近くで見てきたからわかる。けど、それはダメだろ。母さん。周りにばらまくものじゃない。やめてくれ。
「じゃあまたねー!」
これも小声で口をパクパクさせて、おっさんにだけ伝わるように表現する。
あぁ。むかつくなぁ。
母さんにも。自分にも。
「こちらです。」
と通されたのが、102号室。
ベットが2つで、入って右手のベットにじいちゃんは横になった。さらっと横になった。って表現してるけど、横になるのも精一杯だ。車椅子をロックして、手をベットにかけて、力を入れて腰をあげる。これがまた、痛そうなんだ。とても。とても。ググググって聞こえてきそうなじいちゃんの背中は、なんとかベットと密着することが出来た。
「しゃぁ、また何かありましたら声をかけてくださいね」
そうして、ニコニコしながらお姉さんは病室102号室から去っていった。
病室102 episode.03
episode.03
母さん
さて、やっと僕を邪魔するものはなくなった。取られてたイヤホンをまた付け直し、小説に目を落とし、自分の世界に身を投げる。
「ゆう、じいちゃんは?」
顔を上げると、母がいた。買い物から戻ってきたんだ。結構時間が経っていたらしい。
「今診察してるよ。もう出てくるんじゃないかな。」
そう。と言って、隣に座りこう漏らした。
「疲れるわ。ホントに。」
それに僕は応えず、聞こえないふりをして小説に目を落とす。
じいちゃんには子供が4人いる。長男と、あとは三姉妹。その2番目がうちの母さん。ここが離島ってこともあって、島で旦那さんを。つまり僕の父さんを見つけて、結婚。だからずっと島にいる。他の兄弟は、皆島外に家族をもっている。
島に唯一残った母さんは、じいちゃんの1番頼れる存在だった。日頃の愚痴の掃き溜めはもちろん、飯を作って持っていったり、掃除をしたり、作物の手伝いをしたり。何もかもを母が手伝っている。1人でやらせると怖いからだ。少しコケるだけで大事になるから。
本当に、よくやってると思う。
母さんだって暇じゃないんだ。母さんが経営している美容室も、父さんが経営している整備工場のデスクワークも。もちろん家事や、早起きして作る僕の弁当も、全て母さんがやってる。
そんな中、じいちゃんが奥さんを失くして約10年。母さんがじいちゃんの面倒を見ている。
尊敬する。心の底から。
だから、じいちゃんに対する疲れも、愚痴も、漏れるのは仕方ない。それに見合うだけ母さんはがんばってる。
じいちゃんが診察を終えて出てきた。あの優しいお姉さんも一緒だ。
「それでは、これから心電図と、、、」
母さんが指示を受ける。はい、はい。と。僕は片耳で聞いている。どうやらじいちゃんは、入院するらしい。
「先、心電図だって。」
そういってると、お姉さんがいつの間にか車椅子を持ってきてくれていた。
「おじいさんどーぞ。」
明るい声にじいさんも躊躇なく、けど慎重に、痛い痛いと言いながら車椅子に掛けた。やはりこのお姉さんプロだ。
優しくてできる女性っていいよね。
そう思いながら僕はじいちゃんの車椅子を押し始めた。
病室102 episode.02
episode.02
立派なお孫さん
じいちゃんと並んで座るのはなかなか新鮮だ。歳の差68。共感できることも、話が合うことも滅多にない。だから僕ができるのは、じいちゃんの話を聞いてやること。
だけど、話してくれることはいつも暗いことばかり。正直まいってしまう。
体が痛い。痛い。痛い。まともに歩けない。なんでこんな体になったんだろう。耳が聞こえない。痛い。目が見えない。味がしない。ばあちゃんは逝ってしまった。痛い。孤独死はいやだ。長男帰ってこい。介護をしろ。痛い。痛い。
ああ。伝わるよ。すごく、辛さが伝わる。痛さが伝わる。それはもう、鬱陶しい程に。
学生であるが故に、受験や部活という理由でじいちゃんと向き合おうとしてなかったが、その理由も今では効果はない。僕は来年、この島を経つ。だからお世話になった人にお礼がしたい。行動で示したい。もう逃げるべきではないと、今になって考えている。まだ間に合う。そう思う。
「松岡さーん」
診療室から優しそうなお姉さんが僕のじいちゃんを呼ぶ。
はい、こっちです。と僕がじいちゃんのかわりに応える。じいちゃんきは聞こえていない。僕があっち行こう。と伝える前にお姉さんが近くに寄ってきて、じいちゃんに問いかける。
「腰痛できたの?」
じいちゃんに聞こえるように、大きく、ハッキリした声で。さすが、プロだ。じいちゃんもすぐ気づいた。
「はいはい、そうです。ここがね、」
と腰に手を当て、痛む場所と、痛み方を語る。
「これはね、12ヵ年前に、大きな事故をしてね。そのときあっちの病院にいったけどね、そこのあの先生に見てもらったんだけど、どこも悪いところはないって言ってね。ect」
こーなると長い。1から10まで説明してくれるのは親切ではなく、人との交流が楽しいから、長引かせたいからだ。
「今日は腰痛できたんだよね?診察でしょ?」
と、お姉さんはあくまで笑顔で、改めて質問した。
「ああ、そうそう。ここがね、ect」
「じゃあとりあえず行こっか!!」
その対応、正解だ。そうでもしないといつまで経っても診察できない。
そうしてお姉さんとじいちゃんは診察室に入っていった。
さて、小説でも読もう。ポケットからだしたイヤホンを耳にあて、ページをめくる。スマホのイヤホンジャックに接続し、僕の好きなプレイリストが再生される。
病院でもこうすれば僕の世界にいられる。じいちゃんから、騒音から、全てから開放される。
「なにしてるの?」
「君こそ何をする。」
右耳のイヤホンを取られた。本当、なにをしてくれる。せっかくいいところだったなに。顔を上げると、そこにはうちの高校の女子生徒がいた。成績優秀スポーツ万能。口がうるさいのが玉に瑕だか、明るくて、世間でいうところの、いい人。だ。
「私はおばあちゃんの付き添い。」
「へー。僕はおじいちゃんの付き添いだよ。」
「さっきからみてたけど、なんか、やるじゃん」
ニヤニヤしてそういった。
「なにが?」
「ちゃんとおじいちゃんのこと見てあげてるしさ。コケそうなところ支えてたよねー。」
「それは君も同じだろう。」
「いやいや〜」
と笑顔で続けて、私は付いてきてるだけだもん。と謙遜する。さらに続ける。
「立派なお孫さんだね」
「それは、ないよ。」
うん。断じてそれはない。
「じゃ、私いくね。」
と手を振って、そのおばあちゃんとやらと一緒に病院から去っていった。
立派なお孫さん。か。
やっぱり、それはないよ。
病室102 episode.01
episode.01
治療室
病院にじいちゃんを連れてくるのはいつの日からか2ヶ月に1回ほどの恒例行事となっていた。小さい頃も何度か連れられることはあったけど、なぜ来ているのかって疑問も、理解はもちろんなかった。だが、18になった僕は、病院に来る理由を知らざるを得ない。その主な理由として、認知症や、腰痛だという。今日は腰痛が理由で僕の母が車でじいちゃんを連れて地元では割と有名な病院に来ている。といっても小さな離島で、病院が数えるほどしかないが。
そしてじいちゃんはというと、まともに歩けず、ここ3日ほど寝たきりらしい。なんとか松葉杖で歩くのがやっとだ。常に痛みと戦っている。とはいってもよく喋るし、うるさいぼどだ。記憶も意識もはっかりしている。
でもやはり、頭にも確かに何かが迫っている。
「鍵がない。」「カマがない、持っていっただろ。」「ものが無くなった、泥棒だ。」
と、あるものをないという。ないものをあるという。それはつまり、そーゆー事だろう。頭にキテるなと、時々思う。そして、悲しくなる。
病院に着くと、いつも通り僕は読みかけの小説とスマホとイヤホンを片手に。そして、余った手はじいちゃんの手を握って病院に入る。この歳でコケたら入院騒ぎだ。
受付に、松岡です。じいちゃんが腰痛できました。診察お願いします。と告げる。すると、爽やかなお兄さんが対応してくれた。連絡賜っております。腰痛ですね。処置室へどうぞ。横になれるので。
先に僕が処置室の様子をみる。
そこにはベットが三つ備わっていて、一つはじいちゃんより頭が天に召されつつあるお婆さんが「あああああああああああああ」と叫んでいる。僕の頭も召されそうだ。
ここにじいちゃんを入れるのは気が進まない。じいちゃんの意識はハッキリしてるし、この人と同じ扱いをするのは、出来の悪い孫としてもすごく嫌だった。
じいちゃん、横になりたい?ととりあえず聞いておく。僕は答えを知っている。
あぁ、いいよ、座るよ。
そうして、診察室前の長椅子に二人並んで腰をかける。こうして僕らは処置室は避けることが出来た。
過去より未来の話をしよう
「来年の話をすると鬼が笑う」
ということわざを知っているだろうか。
先のことなど誰も分かりはしない。
そんなことをあれこれ言っても仕方ない。
そんな話をすると鬼でさえ笑う。
たしかそんな意味だった気がする。
申し訳ないけど僕は、未来の話をするのが大好きだ。
僕を知ってる鬼さんにはきっと、笑いまくってるんだろうなぁ。とか思ったり。
いいじゃないか。
笑うことはいいことだ。
僕が言いたいのは、過去の話をするよりよっぽどいいだろ?ってこと。
過去の話なんか、''これから''が無くなった、ジジイババアになってからすればいい。いまするのはこれからの話だ。
いいじゃん。
これからの話をしている人間ほど幸せそうな人はいないだろう?
「晩飯何かなぁ。」なんてたわいもない事も、「将来の夢は」ってませて語るのも。そんな少年の目は誰よりも輝いてるはずだ。
僕達若者にはこれからしかない。
これからを生きていくのにこれまでの話をしたって仕方ないじゃないか。
そんな話、それこそ俺が笑ってやる。
だからみんな。
一緒に明日の話をしよう。
なんだっていいんだ。
俺は明日、「くしゃみ」っていいながらくしゃみをしたいなって思ってる。
鬼よ。高らかに笑え。
笑顔が似合わないやつなんていない。
明日に希望を抱かない奴なんていないんだ。
ちなみに、この話に共感できる人は、
おすすめです。
Uでした。
親友
こんばんわ、Uです。
さて今回のお題は「親友」
皆さんには、親友と呼べる友達がいますか?
お互い一緒にいると楽で、楽しくて、落ち着いてて、本当の自分でいられる相手。
僕にはいます。
ずっと一緒にいられるような奴が。
彼には努力する才能があって、勉強や部活、趣味にすらしっかり時間を費やして、自分のモノにしている。
そんな彼の一番のいい所は、
いつも人に囲まれていることだと思う。
たくさんの友達がいて、いろんな人から相談を持ちかけられたりして信用もある。
いつも笑っているような、明るくていい奴だ。
ま、欠点も沢山あるけどそこも含めてBFF☆
その一方僕は、
努力は苦手。でも好きなことにはとことん入り込める。
パソコンが得意で、検定とってたり、音楽が好きで、いろんな楽器を演奏できたり。まぁ、このブログもそうだけど、好きのこと。
そーゆーものには時間と努力を惜しまない。
そんな僕の一番のいい所は、
1人でもきっと、生きていけるところ。
自分の力で、これから生きていく自身はある。
友達もいる。
けど、これからずっと支えてくれるとか思っていない。
支えてくれるようなことは彼らにしてない。
僕の親友は、人に囲まれて生きていく。
僕は、1人でいきていける。
ネタを明かそう。
なぜこんな2人がお互いを親友と呼べる存在になるのか。
答えは、
お互いがお互いに憧れだからだ。
彼にとって僕は、1人のでも生きていける、独立してる、彼にはない僕。
僕にとって彼は、皆に囲まれて生きてて、これから先も人に囲まれる、僕にはない彼。
何事にも当事者であろうとする彼と
何事にも傍観者であろうとする僕
お互いに対局の存在で、お互いに憧れで、お互いに高めあえる。
だからずっと一緒にいられる気がする。
こいつなら僕のこれからの人生に介入してきても怒りはしない。
それくらい、俺とは真反対の、素敵なやつだ。
ちなみにこれまでの文章は全部僕の考え。
あいつが実際どう思ってるとか知らないし
聞きたくもない。
けど、なんであいつが一番の親友と呼べるのか、自己解釈として、以上の通りだ。
Uでした。
涙。
皆さん。泣きますよね?
うんうん。
僕も泣きますよ。
もちろん。
僕は多分他の人とは違う場面で泣いてしまいます。でも共感してくれる人も多いとおもいます。
一般的に泣く場面って、
- 大切な何かを失った時
- とても悲しい時
- 驚いた時
- 嬉しい時
って感じだと思います。
僕の場合、
- 自分の気持ちを言葉にしたとき
- 大切な何かを失った時
- ・・・。
ないですね。これくらいです。
小さい頃はもっと感情豊かで、いっぱい泣けてました。当たり前ですが。
でも、JKを例にすると、驚いて泣くとか、サプライズされて嬉しすぎて泣くとか、映画で泣くとか。
ごめん。わかんない。
そんな事で涙を流すのか。
僕が泣く一番の要因は、
自分の気持ちを言葉にしたとき。
なんです。
誰しも、思ってることって、なかなか口に出せないですよね。
僕もそうです。
だから、普段口に出さないことを口にすると、僕は涙が出ます。
それが悪口でも、感謝の言葉でも。
普段思っているけどなかなか口にしないことは、口にすると、蛇口が壊れたように感情が溢れてきて、涙も溢れます。
悪口を言うと、すっきりすると同時に、今までの我慢とか、その言葉を言われた相手を思う気持ちが、自分にぶつかってきます。
感謝を言うと、日頃の思い出とか、その件に募った思いが溢れてきます。
涙は僕にとって大切です。
感情をあまり表に出せない、不器用な僕にとって、唯一形として自分の前に現れてくれるもの。
すごく悲しい事があって、悲しんでるはずなのに涙が出ない。僕は本当に悲しめてるのかなってどこかで不安になるときが来ると思います。
そんな時は自分の気持ちを言葉にしてみてください。
自分が悲しんでるっていう感情が、
涙に変わってくれるはずです。
みんなが、涙をむやみに流さない世の中になるといいな。
Uでした。