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病室102 episode.01

episode.01

治療室

 

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病院にじいちゃんを連れてくるのはいつの日からか2ヶ月に1回ほどの恒例行事となっていた。小さい頃も何度か連れられることはあったけど、なぜ来ているのかって疑問も、理解はもちろんなかった。だが、18になった僕は、病院に来る理由を知らざるを得ない。その主な理由として、認知症や、腰痛だという。今日は腰痛が理由で僕の母が車でじいちゃんを連れて地元では割と有名な病院に来ている。といっても小さな離島で、病院が数えるほどしかないが。

 

そしてじいちゃんはというと、まともに歩けず、ここ3日ほど寝たきりらしい。なんとか松葉杖で歩くのがやっとだ。常に痛みと戦っている。とはいってもよく喋るし、うるさいぼどだ。記憶も意識もはっかりしている。

 

でもやはり、頭にも確かに何かが迫っている。

「鍵がない。」「カマがない、持っていっただろ。」「ものが無くなった、泥棒だ。」

と、あるものをないという。ないものをあるという。それはつまり、そーゆー事だろう。頭にキテるなと、時々思う。そして、悲しくなる。

 

病院に着くと、いつも通り僕は読みかけの小説とスマホとイヤホンを片手に。そして、余った手はじいちゃんの手を握って病院に入る。この歳でコケたら入院騒ぎだ。

受付に、松岡です。じいちゃんが腰痛できました。診察お願いします。と告げる。すると、爽やかなお兄さんが対応してくれた。連絡賜っております。腰痛ですね。処置室へどうぞ。横になれるので。

 

先に僕が処置室の様子をみる。

そこにはベットが三つ備わっていて、一つはじいちゃんより頭が天に召されつつあるお婆さんが「あああああああああああああ」と叫んでいる。僕の頭も召されそうだ。

ここにじいちゃんを入れるのは気が進まない。じいちゃんの意識はハッキリしてるし、この人と同じ扱いをするのは、出来の悪い孫としてもすごく嫌だった。

 

じいちゃん、横になりたい?ととりあえず聞いておく。僕は答えを知っている。

あぁ、いいよ、座るよ。

そうして、診察室前の長椅子に二人並んで腰をかける。こうして僕らは処置室は避けることが出来た。