病室102 episode.08
episode.08
痛みの原因
あれから1週間。今日は10/10だ。
僕の地元はかなり南の島なのでまだまだ半袖で暮らしている。
そして、明日から中間考査が控えている。俗に言うテストだが、今の僕は部活もなにも属していないため、しっかりと勉強に取り組む。しかなかった。
この1週間、毎日見舞いに行っている。
行くたびにじいちゃんは顔が少し老けていく。
目から光が無くなっていく。
生きるための、気力をなくしていく。
じいちゃんは入院後、立っている姿を見たことがない。寝返りを打つだけでも苦虫を食ったように顔をしかめ、うううううとか、あががががとか漏らして、とにかく痛いみたいだ。
本当に、見ていられないくらい。
年寄りが苦しむ姿は見ていてかなり辛い。
どーしたものか。
その腰の痛みの原因もつい先日ドクターによって明らかになった。
「血液中に菌が入っています。老化による血管の縮小が、腰の血管を詰まらせて、そこに菌がたまり、炎症を起こしているような状態です。」
つまり?
「どの病気もそうですが、この病気は特に、若ければ若いほど治りやすい。おじいちゃんの年齢からすると、体力面や精神面でかなり無理があります。」
ああ。
「少なくとも、もう2度と歩くことは叶いません。」
やめてくれ。
「現時点でおじいさんの体温は38.5~39.6度を行ったり来たりしています。」
たのむから。
「この状況が続くと、」
やめてくれよ。
「近いうちに息を引き取る可能性が高いです。」
今日も面会に行った。
「ああ、ゆうっ。来てくれたの。」
「うんうん。・・・大丈夫ね?」
「かわらんよぉ。」
そういってまた、痛みに顔をしかめる。
体を少し捻ることすらままならないんだ。
「痛い痛い痛ぃ...あぁ...たまらんよぉ。」
うん。うん。としか言ってやれない。
なんて声をかけていいのかわからない。
「おれ、明日からテストだよ。」
耳が遠いため、口もても大げさにしてなんとか4度同じことを言った時、伝わった。
「あー、そうねそうね。がんばりなさいよぉ。」
「うんうん、ありがとう。」
「・・・。あのねぇ、」
「なぁに?」
「あんたにね、上等な背広買ってあげるからね。進学してからも、成人してからも、ずーっと使っていけるような、立派なやつを。」
プレゼント、ということだろうか。
それとも。
「うそぉ、ありがとう!」
声は届いていない。
「最後に、その背広きたゆうと、写真が撮りたいなぁ。」
なんで、そんな言い方するんだよ。
「う、うん。写真いっぱい撮ろうねー。」
「遺影も撮らないとなぁ。」
さらっと言ってくれやがったその言葉は、本当に、心臓を逆なでされたような、そんな感覚をのこして耳から去っていった。
「・・・うん。」
また、うんとしか言っていない僕がいる。