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僕が僕を見つけるブログ

病室102 episode.03

episode.03

母さん

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さて、やっと僕を邪魔するものはなくなった。取られてたイヤホンをまた付け直し、小説に目を落とし、自分の世界に身を投げる。

 

「ゆう、じいちゃんは?」

顔を上げると、母がいた。買い物から戻ってきたんだ。結構時間が経っていたらしい。

「今診察してるよ。もう出てくるんじゃないかな。」

そう。と言って、隣に座りこう漏らした。

「疲れるわ。ホントに。」

それに僕は応えず、聞こえないふりをして小説に目を落とす。

 

じいちゃんには子供が4人いる。長男と、あとは三姉妹。その2番目がうちの母さん。ここが離島ってこともあって、島で旦那さんを。つまり僕の父さんを見つけて、結婚。だからずっと島にいる。他の兄弟は、皆島外に家族をもっている。

島に唯一残った母さんは、じいちゃんの1番頼れる存在だった。日頃の愚痴の掃き溜めはもちろん、飯を作って持っていったり、掃除をしたり、作物の手伝いをしたり。何もかもを母が手伝っている。1人でやらせると怖いからだ。少しコケるだけで大事になるから。

本当に、よくやってると思う。

母さんだって暇じゃないんだ。母さんが経営している美容室も、父さんが経営している整備工場のデスクワークも。もちろん家事や、早起きして作る僕の弁当も、全て母さんがやってる。

そんな中、じいちゃんが奥さんを失くして約10年。母さんがじいちゃんの面倒を見ている。

尊敬する。心の底から。

だから、じいちゃんに対する疲れも、愚痴も、漏れるのは仕方ない。それに見合うだけ母さんはがんばってる。

 

じいちゃんが診察を終えて出てきた。あの優しいお姉さんも一緒だ。

「それでは、これから心電図と、、、」

母さんが指示を受ける。はい、はい。と。僕は片耳で聞いている。どうやらじいちゃんは、入院するらしい。

「先、心電図だって。」

そういってると、お姉さんがいつの間にか車椅子を持ってきてくれていた。

「おじいさんどーぞ。」

明るい声にじいさんも躊躇なく、けど慎重に、痛い痛いと言いながら車椅子に掛けた。やはりこのお姉さんプロだ。

優しくてできる女性っていいよね。

そう思いながら僕はじいちゃんの車椅子を押し始めた。